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Q&A

第8回がん就労を考える会で皆さんから頂いたご質問にお答えさせて頂きます。

※全てのご質問は掲載しておりませんのでご了承ください。

Q1

社内で両立支援を進めていますが、取り組む中で、毎度立ちはだかる壁があります。社員区分に見合う仕事が出来ない時の対応方法について皆様のご意見を伺いしたいです。患者さんは職場へ病名を伏せて欲しいが配慮をして欲しいということもあり困る事がありました。本日、可能であれば教えてください。(産業保健師)

回答

社員区分に見合った仕事ができていないということが一時的な機能低下ということであれば、主治医からの意見書などを携えて人事や職場と話し合いをされると良いと思います。主治医の意見書に病名は必須ではないと思います。会社側も合理的な範囲で配慮を行う必要があると思います。(産業医 上原)

病名を伏せたい気持ちは尊重しつつ、あまり長期にわたる場合やかなり配慮を要する場合などは、病名を告げた方がスムーズに進む場合もあると思います。その場合は、告げる相手に守秘義務の話もするなど確認して本人を安心させることも大事と思います。(産業医 石川)

 

社員区分に見合う仕事ができなければならないという視点について、違う角度から考えることもできるかと思います。一時的な機能低下であれば、主治医の意見を踏まえて、会社とご本人との対話にて調整可能点を見つける、そのために産業保健スタッフとして医療専門職の立場で主治医からの情報を診断名ではなく、就労提供の点から補足説明することになります。一方で恒久的な機能低下が予想される場合には、提供できる仕事にあった処遇に変更することも検討するとよいかと思います。一見処遇低下は従業員の不利益につながるようにも見えますが、処遇変更によりご本人が気持ちの面でも楽になるということもあります。(産業医 水口)

 

Q2

外来化学療法中の患者さんが復職を希望された場合、主治医と産業医の立場で復職可能とする主な要素は何でしょうか?私は企業サイドですので、職場支援力の視点での質問です。(人事/キャリアコンサルタント)

回答

2012年に行った名古屋大学腫瘍外科教室とその関連施設で勤務する外科医師190名を対象とした調査では(回答者184名:回答率96.8%)、「就労可否の判断要因として重要なものは?」との問いに対し、1)身体症状(副作用など)、2)本人の意思、3)作業内容の順でした。個人的には、本人の職場復帰の意思、易感染状態など副作用に対する職場の配慮の有無などを考慮しています。また、副作用に対する支持療法を積極的に行い日常生活への影響を軽減できるよう努めています。(臨床医 赤羽)

 

産業医の立場でお答えしますと、ご本人の復職への意欲と周囲の理解が不可欠だと思います。従前の職務能力までは回復していなくても周囲の支援や配慮があれば仕事復帰が可能となると思います。実際には人事や職場との話し合いが必要だと思います。(産業医 上原)

 

復職可能とする条件として、安全に会社に来られること、および、安全に仕事が続けられることの2点を満たせているかを産業医として、体調面、業務環境面から確認しています。十分な休業期間が確保できる方であれば、化学療法中は療養に努めていただくことも検討しつつ、復職を検討する場合には、安全に働いていただくために、業務環境面での配慮事項(残業や肉体労働、シフト勤務を控えるなど)について、従業員と会社担当者(上司、人事)とで復帰前の事前調整が重要だと考えます。(産業医 水口)

 

Q3

企業内における両立支援コーディネーターの役割と皆さまとの連携がどのようになっているかを教えてください。

回答

企業内保健師がいる場合、両立支援も健康管理のトータル的な予防活動の中でのひとつと位置づけられているため、①社員(患者)や、その上司・同僚への相談対応、②社員(患者)・主治医・産業医・事業場担当者の意思疎通が図れるように間に入ってサポートする、などきめ細やかな個別調整支援を実施し、コーディネーター的役割を担っています。

がん就労のメンバーは様々な職種で構成されていますので、お互いの役割を知ることで、必要な時に必要な連携がとれる体制が構築されてきているように思います。(産業保健師 高崎)

 

Q4

企業は利潤を追求する中で、多くはないがん患者さんに対しての、両立支援に、積極的ではありません。どのように企業を説得していけば良いでしょうか。(産業医)

回答

社内で両立支援の重要性を理解してくれるキーパーソンを見つけることはできないでしょうか。人事担当者や安全衛生担当者、職場の上司や同僚などがキーパーソンになりうると思います。キーパーソンと一緒に意思決定者に理解を求めていくと良いと思います。もう一つ別の視点でお答えしますと、がんに対する理解不足や誤解によって両立支援に積極的ではないのかもしれません。少し時間はかかりますが、社内でがん教育を始めることが有効かもしれません。(産業医 上原)

 

がんだけではなく、その他すべての病気に置いて、一時的、恒久的に就業能力が落ちてしまう従業員さんはいらっしゃると思います。がんを特別視するのではなく、治療中の病気がある、いち従業員さんへの支援として、会社がやってあげられることを本人、上司、人事、産業医を交えて話し合う場を作ってもらうようキーパーソンとなりそうな相手へ説明するところから始めてはいかがでしょうか。(産業医 水口)

 

Q5

療養・就労両立支援指導料について、両立支援に関する主治医との情報提供の際に、書面にサインする人は社長でもいいのですか?

回答

「療養・就労両立支援指導料」にかかる診療報酬点数表には、「・・・当該患者と当該患者を使用する事業者が共同して作成した勤務情報を記載した文書の内容を踏まえ、就労の状況を考慮して療法上の指導を行うとともに・・」と、ありますので、提供書の内容に対して患者(労働者)の合意があれば、社長のサインでも差し支えないと考えられます。(医療ソーシャルワーカー 野崎)

 

Q6

労働者の会社の就業規則(例えば就労時間や業務内容など)を考慮せず出される意見書や診断書を拝見することがあります。ある会社で「復職可だが短時間勤務を6か月」という意見書を持って来られ、就業規則上、それは就労可とは認められないという事で結局その方は退職となりました。その会社での就業規則の内容を主治医にお伝えした上で、がん治療中の労働者が本当に就労可なのか、判断を求めるという事は医師の立場からすると困惑される事なのでしょうか?

回答

就業規則の存在を理解していない医師がいるかもしれません。しかし、当該職場の就業規則に配慮して就業上の意見を提出することは両立支援において医療者側が理解しなければならないことの一つです。療養・就労両立支援指導料の算定における職場から提出する勤務情報として就業規則の内容をお伝えいただくことは有用と考えます。(臨床医 赤羽)

 

Q7

がん患者さんは、治療のことを医師や看護師にまず治療のことを相談、次に就労のことを自分で解決(退職)してしまう傾向も多いと思いますが、それを医療機関が早期に各関係機関(産保センター等)につなげていくために、まず一番の対策を教えていただきたいです。

回答

「就労のことを自分で解決(退職)してしまう傾向」を未然に防ぐ対策としては、院外の各関係機関につなげる前に医療施設内でできることも多いと思います。まず、①診断時に、早まって辞めないように伝えること②患者さんの混乱した気持ちや情報の整理を助けること③病院内でも、仕事の相談に乗れる場所があることを伝えること④資料等を参考に両立できる方法があることを知っていただく等があると思います。その上でアセスメントを行い、治療と就労の継続や、治療後の復職に向けてなど、職場とのさまざまな相談や、働き方の工夫など、職場と患者さんの間での支援が必要となる場合、またはなることが予測される場合は、早めに院外の関係機関につなぐ必要があると思います。(看護師 室田、医療ソーシャルワーカー 野崎)

 

がん患者さんは「治療がひと段落した」「休職期間の満了が近づいてきた」というように、復職が現実的な問題として目前に迫って初めて「これからどうしよう」と考え出すことが多い傾向にあります。そこで何らかの配慮を求めるような不具合があると、短期間で企業との調整をする必要に迫られます。企業としても寝耳に水で、対応に困ったり、対立関係に陥ったりします。目先の治療に対する心配に気持ちを奪われるのは致し方ないことではありますが、それが復職を遠ざけてしまう結果にもなりかねません。「いずれ復職…」と漠然と考えて棚上げした状態にさせないためにも、名古屋第二赤十字病院や愛知県がんセンターで実施している初診時のスクリーニングにより、医療者が就労状況を把握し、さらには治療の先にある復職への可能性と働きかけを示唆することが重要ではないでしょうか。(キャリアコンサルタント 服部)

 

Q8

乳癌治療痛の患者です。告知から6年ですが、その間に就労不能状態になり、退職してしまいました。現在病状が落ち着いてきましたので社会復帰の相談をしたいのですが、自分の病院にそういった部署がない場合は、どこに相談すればよいでしょうか。(患者)

回答

がん診療連携拠点病院の相談支援センターへ相談されるのが良いと思います。他施設で治療中の患者さんでも相談可能です。尋ねる前に一度電話等でご連絡いただけるとその後がスムーズと思います。(臨床医 赤羽)

 

Q9

診断書の内容によっては、何回か、主治医に追記をお願いしたことがあり、本人は、診断書代が高額で、困っているとの経験がありました。診断書・意見書:会社の経費では、難しいですよね。できる企業もあるかと思いますが、難しそうです。(人事担当者)

回答

療養・就労両立支援指導料の改定により、限りはありますが複数回の療養上の指導が保険診療として認められました。職場復帰後の継続支援を行いやすい状況になりましたので、意見書の内容にご不明な点があれば医療機関へお尋ねください。(臨床医 赤羽)

 

Q10

治療中の患者ですが、【療養・就労両立支援指導】の存在を知りませんでした。この書面に、患者にどういう効果があるのかよくわかりません。会社に産業医はいますが、直接関わったことはありません。会社から【療養・就労両立支援指導】の話を聞いたことはありません。病状については、自力で人事(上司)に話をする状況です。正職員でないので、精神的には負担です。会社としては、「配慮しながら働かせる」という選択肢は薄めで、「休む」か「普通に働く」の二択化で考えているように感じます。(患者)

回答

一般的に診療報酬の仕組みに関しては知られていないことの方が多く、必要な時に適宜医療側から情報提供を受けることになると思います。診療報酬の制度は多岐にわたり主治医が仕組みを知らない可能性もあるので、場合によっては患者さん側から主治医や相談支援センターに対して「こうした仕組みを活用したいのですがどうでしょう?」と相談してみてもいいのではないでしょうか。言われるとおり、企業側に「制限なく働ける」「療養中で働けない」の二択しか頭にないというケースは、私たちも支援の中で数多く出会って実感しているところです。そこをなんとか少しずつ(ゴリ押しになると対立関係になって元も子もない…という状況になるので)企業の法的義務などの説明をしつつ、外堀を埋めるようにして理解を求めていくという支援を展開しています。外部機関にそうした支援を求めることも1つですし、ご自身でされるのであれば、働きかけるキーマンを見極める(より理解があり、影響力があり、動いてくれそうな人)ことも重要な要素です。(キャリアコンサルタント 服部)

 

Q11

様々な制度をご紹介いただいたのですが、正社員でない方や、個人事業主の職場に勤めていらっしゃる方ですと、なかなか制度を使いにくいときがあります。そのようなときに、何か考えられる支援はありますでしょうか?(市民病院)

回答

・社会保険制度面

正社員でない方や個人事業の職場に勤めている方で、国民健康保険に加入されている場合、傷病手当金制度が無く、療養のために仕事を休むと収入も止まってしまうケースがあります。社会保険制度の範囲ではこうした場合の収入保障は難しいですが、国民健康保険料の減免や国民年金保険料免除等で、支出を抑えられる可能性はあります。

・職場の制度面

個人事業主の職場ですと、少人数のため就業規則が無いところも少なくありません。

休職制度が無いと、療養のために仕事を休めるのかどうか懸念されます。

一方で、規則で詳しく要件が定められていない分、事業主との相談による個別対応の余地があると考えることもできます。ご自身の状況を整理し、事業主と相談するための準備を、医療機関で支援できると良いと思います。

・経済面

個人事業主の方であれば、市町村の経済課や商工会議所などで独自に緊急融資制度や借入金返済救済制度をもつ場合もあるので、担当窓口へお問い合わせいただくと良いと思います。

・全般

個人事業主の方、正社員でない方等は使える制度も多くなく、なかなか相談先もなく、一人で悩んでしまうことがあると思いますが、一人で抱え込まず、がん相談支援センターや産業保健総合支援センター等にまずはご相談いただければと思います。

(社会保険労務士 山下、医療ソーシャルワーカー 野崎)

 

Q12

現場で患者の治療を担当している医師の立場から、就労支援を推進していきたいと願っております。一方、患者さんの中には、明らかに労務可能な状況であるのに、長期間、「労務不能」と書類に記載して欲しいと依頼されることがあり、ジレンマを感じております。この問題をどのように考えれば良いでしょうか?

回答

症例ごとに事情が異なると思いますが、例えば夜勤業務に従事する必要がある患者さんで仕事のストレスが原因でがんが悪化するのではと心配されている方がいました。そのような方が復帰を躊躇している可能性があります。身体的な改善に精神面での改善が追いつていない場合も想定されます。何が不安なのかどのような対応が必要かなど気持ちの整理を促すことも対応の一つと考えます。(臨床医 赤羽)

 

実際、本人の復職意欲があるのに企業側が受け入れへ消極的である場合と、本人が復職へ消極的であるのに主治医の前では企業側の問題と話している場合がありえます。前者の場合、配慮が必要で、そのような配慮をしての職場の準備には時間を要する、という場合もあり得ますので、そこは企業側へどこまで配慮が必要なのか、あるいは過度な配慮は不要なのか、など情報を伝えて頂くと、スムーズに進む可能性があります。後者の場合は、あまりに長期化する場合は、主治医の立場から後押し頂くことが有効の場合もあると思われます。(産業医 石川)

 

Q13

療養就労指導料の料金の説明については、どのようにしているのか。

外来で、追加精算(2回目以降も含む)されるため、患者さんにどのように説明しているのか。

回答

名古屋第二赤十字病院では、職場からの勤務情報提供書と、主治医の意見書と双方向のやりとりをする上で、指導料や追加料金が発生すること、職場と主治医が就労に関して情報交換を行うことのメリット、料金の提示などを文書で説明し、患者さんの納得が得られたら勤務情報提供書をお渡しし、まず職場から情報提供をいただくことを説明しています。(看護師 室田)

 

Q14

医療者ががんに罹患し復職の際は、所属先の上司や同僚のサポートが主だと思います

病院の職員ががんに罹患した場合、病院のサポート体制両立支援のケースがあれば教えていただきたいです。(看護師)

回答

名古屋第二赤十字病院には、心身の健康問題で休業した職員が、安心して円滑に職場復帰ができることを目的として職員健康対策室というのがあります。そこでは産業医と保健師が、休業から職場復帰までプログラムを立て支援を行っています。がん罹患者に対する両立支援は、個別性が高いので個々のケースに応じた支援をしてもらっていますが、基本的には健康対策室や現場スタッフと直属上司が、本人の了解なしに直接話し合うことはありません。(看護師 室田)

 

Q15

両立支援コーディネーターは、医療と職場の架け橋となるポジションですが、どういう職業や所属先にいる人が適当でしょうか?コーディネーターの研修をうけたにも関わらず、実際に役に立てていません。

医療側にいる人に加えて、企業など職場に近しい場所にいて、企業側の環境を理解できる人がもうひとりいることが望ましいように思います。産業医、保健師がいない場合は難しく、また、そのような小規模の職場の方が退職に至ってしまうケースになることが多いと思います。

回答

医療や職務規則に関する基本的な知識はあったほうが良いかもしれませんが、コーディネーターなので、医療と企業をつなぐ立場として、コーディネーター自身が両者に近づく姿勢が最も重要だと考えています。医療側の立場であっても、企業側のキーとなる人を見つけて何らかの方法(患者を介するなど)で連携できれば十分に役割を果たすことができると考えています。(看護師 岩井)

 

Q17

当院でも就労支援の仕組みづくりをしている最中です。まずは対象を絞って対応していこうと思っています。コーディネーターが介入するタイミングは、診察時(理想は告知前)にスクリーニングをして、と考えていますが、対象者のピックアップの手段(コーディネーター介入のタイミング)について、良い案があれば様々な意見を聞いてみたいです。以下は私感ですが、先日、両立支援コーディネーター研修を受けましたが、半数には企業側の方の参加でしたので、病院のコーディネーターと企業のコーディネーターとが患者に双方から関わることができると理想だなあと感じています。(MSW)

回答

両立支援コーディネーターが、院内のどこの部署に所属しているかによって、それぞれ施設内における活動の仕方は異なってくるかも知れませんが、導入時は診療科を限定して試験的に活動し、少しずつ診療科を拡大していくのも良い方法と思われます。外来での告知が多いことから、外来スタッフと両立支援コーディネーターが連携を図ることも有効と考えます。

問診票などで機械的に就労の有無、支援ニーズの有無を聞き取っていくことで診断時(告知前)にスクリーニングを行い、支援ニーズがあると回答された方をがん相談支援センターなどにご案内することも一つの方法であると思われます。(問診票で運用の際は、がん患者さんでない方もスクリーニングされることになります。)

しかし、診断時点では患者さん自身も今後どのような治療の見通しになるのか、その上でどのように就労に影響が及ぶかは予想がついていないことも少なくありませんので、スクリーニングのみで支援が必要な患者さんを抽出するのは限界があり、その後においても介入ポイントが必要になると思います。(看護師 室田)

 

Q18

社内で両立支援を進めていますが、取り組む中で、毎度立ちはだかる壁があります。社員区分に見合う仕事が出来ない時の対応方法について皆様のご意見を伺いしたいです。患者さんは職場へ病名を伏せて欲しいが配慮をして欲しいということもあり困る事がありました。本日、可能であれば教えてください。(産業保健師)

回答

上記質問1と重複していますので、そちらをご覧ください。(産業医 石川)

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